7つの不安障害とその症状
ほとんどの人が、人生のあるポイントで不安感を感じることがあります。これは疑いもない事実です。
「不安」と一口に言っても、心理学的には、実は様々な種類の「不安障害」と呼ばれる精神的な疾患があり、その原因や症状もそれぞれ異なります。
心理学の専門家たちは不安障害を7つのカテゴリーに分類しています。
まずは、不安感は一般的な感情だということを知った上で、この7つの不安障害についての理解を深めていきましょう。
不安感は、不確かな状況や無理をしている時の心理的なメカニズムですが、通常は適切に対処できます。
しかし、自制心を失うような恐怖心や日常生活を継続できないほどの不安感は不安障害と呼ばれます。
厚生労働省は「大勢の人の前で話すときや大事な試験のとき、緊張して汗をかいたり、心臓がドキドキしたりするのは当たり前の反応です。でも心配や不安が過度になりすぎて、日常生活に影響が出ていたら、それは不安障害かもしれません。」と説明しています。
不安障害の7つの種類を理解し、自制心を失うほどの不安感や、誰の助けも得られないように感じる時などは、専門医の診断が必要です。
1. 全般性不安障害
全般性不安障害は、多くの人が発症する不安障害です。人生のある時点でほとんどの人が不安を抱え、緊張感や不安感を発症したり、そして落ち着きがなくなるなどの症状が起こります。
また空虚感やコントロールできないほどの漠然とした過剰な不安感などが起こります。仕事の面接、人前でのプレゼンテーション、生活や仕事の変化、新しいことを始めようとするなどの状況が引き金になります。
全般性障害の症状をいくつかご紹介します:
- イライラ、浮動性不安、自制心の喪失
- 疲労感、エネルギーの喪失
- 筋肉の過緊張(特に背中、首、肩)
- 仕事や自分が行うべき活動に集中できない
- 負の考えや破壊的な考えに支配される
2. 社交不安障害
二つ目は社交不安障害です。
人前で何かをするときに緊張するのは一般的ですが、その状態をひどく苦痛に感じ、それから逃げてしまうのが社交不安障害です。
このカテゴリーには、人前でしゃべるとき、討論するとき、またはプレゼンテーションをするときなど、多くの人がいる場所が苦手な人が発症することが多く、洋服を返品するというシンプルな行動などでも発症することがあります。
社交不安障害の症状をご紹介します:
- 知らない人の前や初めての場所で恐怖心や不安感を感じる
- 冷たい汗やどもり、新しい人を紹介された時や自分のコントロールがきかない状況で感じる腹部の痛み
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3. パニック障害
この不安障害は、自分は死んでしまうのではないか? 心臓発作を起こすのではないか? 交通事故に巻き込まれるのではないか? 誰かに傷つけられるのではないか? などという考えが頭の中で明確になり、不安に襲われる精神疾患です。
また一度不安感を感じたり、パニックアタックを経験すると「また発作が起きるのではないか」という恐怖心から、全く関係のない状況でも自分の意に反してパニック発作の状況が視覚的にフラッシュバックとして出現します。
パニック障害はストレスが原因で起こり、精神的、そして身体的な症状が現れます。
また理由もなく症状が起こることもあるため、パニック障害は非常に複雑な疾患で、経験した人にしか理解できないといわれています。
パニック障害の症状をいくつかご紹介します:
- 激しい動悸
- 過剰な発汗
- しびれや疲労感
- 体の外に出ているように感じる
- 呼吸困難
- 突然の頭痛やめまい
- 胸や胃の痛み
- 消化不良
4. 広場恐怖症
広場恐怖症について聞いたことはありますか?
広い場所、自分の活動範囲を超えた場所に行くこと、そして知らない場所に足を踏み入れることなどに恐怖心を感じる疾患です。
ただし広場恐怖症を発症しているからといって家から出られないわけではありません。この不安障害を発症すると、活動範囲が、自宅、職場、スーパーなどの狭い範囲に制限されます。
また広場恐怖症を発症している人は、同時にパニック障害を発症することが多いと言われており、前述したような症状を発症します。
5. 特定の恐怖症
私たちは誰でも何かに特定の「恐怖心」があります。特にクモ、ピエロ、大音量、雷、尖ったものなどへの恐怖症が挙げられます。
これらは一般的な恐怖心ですが、この恐怖心が日常生活に影響を与えるほどになると、不安障害となります。例えば、クモ、雨や雷、犬に噛まれることなどが怖いから家を出られないなど、ある特定のものへの深刻な恐怖心が特定恐怖症です。
特定恐怖症の症状は以下の通りです:
- ある特定のものに対する過剰で継続的な恐怖心
- 脅しや攻撃への敏感な反応
- 不合理な状況でも恐怖心をコントロールできない
- 日常生活を継続できない
6. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
私たちの生活の安全は決して保証されていないと同様に、私たちが常に守られ、愛され、そして尊敬されるわけでもありません。
心的外傷後ストレス障害は、命の安全が脅かされるような出来事(事故、喧嘩、大切な人の死去、天災、事故、犯罪、虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、苦痛や、生活機能の障害をもたらすストレス障害です。
これらの心にショックを与える出来事によって身体的、そして精神的に傷つくことがあります。
心的外傷後ストレス障害の症状をご紹介します:
- 追体験:心的外傷後ストレス障害の主な症状が追体験です。トラウマの原因となった出来事が、意図せず思い出され、身体的苦痛や感情を追体験する症状です。
- 不安感の再発:トラウマの記憶は時間の経過とともに薄くなるといはいえ、時間がたってからも同じような恐怖を感じ続け、心身に様々な症状を引き起こし、毎日の生活の中で不安感が絶え間なく現れることもあります。
- 貧血、疲労感、集中力の欠落
7. 強迫性障害
強迫性障害も非常に破壊的な不安障害です。
不合理な行為や思考だとわかっていても自分の意思に反して反復する精神疾患の一つです。
強迫性障害には、自分でもつまらないことだとわかっていても、例えば「誰か自分を傷つける」「自分は見捨てられるかもしれない」などというネガティブな思考が意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられないという「強迫観念」と、不潔に思えて過剰に手を洗う、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないといった同じ行為を繰り返してしまう「強迫行為」があります。
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誰にでも不安感はやってくる
今回ご紹介した不安障害は、精神疾患の臨床的なカテゴリーであり、その原因ごとに特定の治療法があります。一般的なすぐに消えて無くなる不安感は、自分で対処方法を見つけることで解消できます。
しかし日常生活に影響を及ぼすなどの不安感に悩まされているときは、必ず専門医の診断を受けて、適切な治療を開始してください。
引用サイト:厚生労働省