ボイルド・フロッグ症候群:小さな違和感に気付くことの大切さ
ボイルド・フロッグ(ゆでガエル)症候群とは、状況が少しずつ変わっている場合、たとえネガティブな変化であっても適応してしまい、やがて取り返しがつかなくなってしまうことを意味する言葉です。
フランスの著述家・哲学者のオリヴィエ・クラークは、著作の中でボイルド・フロッグ症候群について説明しています。
ビジネスの分野でも使われる言葉ですが、今置かれている状況から逃げられないと思いこんでしまい、限界が来るまで我慢し続け、極度に疲労してしまう、というような心の問題にも当てはめることができます。
あなたの心をむしばんでいく悪循環に少しずつ適応し続けることで、やがて心の健康は損なわれてしまいます。
以下で、ボイルド・フロッグ症候群について詳しく見ていきましょう。
ボイルド・フロッグ症候群:エネルギーを使い果たしてしまったカエル
この言葉は、ある科学的な仮説に基づいています:「水温が1分間に0.2℃ずつ上昇していく場合、カエルはお湯の中に留まり、やがて温度が上がりすぎて死んでしまう。水温がもっと速く上昇する場合は、カエルはジャンプしてお湯の外に逃げる」
カエルを水を張った鍋に入れ、少しずつ温度を上げていった場合、カエルは温度の上昇に適応しようとします。
お湯が沸騰し始めると、もはやカエルはお湯の中に留まることができなくなり、ジャンプして逃げようとするでしょう。
しかし悲しいことに、温度の上昇に適応するためにエネルギーを使い果たしたカエルには、逃げる力はもう残されていません。結果として、カエルは命を落としてしまいます。
カエルの命を奪ったものは何だったのでしょう? お湯、または、逃げるべき時を判断できない自分自身だったのでしょうか?
もしカエルを、50℃のお湯を張った鍋に突然入れたなら、彼はすぐにジャンプして鍋の外に逃げることでしょう。しかし、緩やかな温度の変化に耐え続けることで、逃げられること・逃げるべきであることに気付けないのです。
静かな状況の悪化:全て順調だと思い込んでしまう
変化がゆっくりと起きている場合は 認識 するのが難しく、そのため、心が少しずつむしばまれていても、なかなか気付くことができません。行動を起こすべきタイミングがわからなかったり、「まだ大丈夫だから」と、問題に対処しないこと、理不尽な状況に抵抗しないことを正当化してしまい、我慢し続けて、いつの間にか心に大きなダメージを受けているという場合もあります。
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そのように、恋愛、仕事、家族関係、友人関係やその他の社会的状況において、ボイルド・フロッグ症候群に陥っている人を見かけることは珍しいことではありません。
パートナーがあなたを必要としているとき、上司があなたを信頼して仕事を任せたいと考えているとき、友人がいつもあなたを頼ってくるときなど、気分が良いと感じることもあるでしょうし、それら自体は否定されるようなことではありません。
しかし、そういった要求にいつも応え続けていると、時間が経つにつれて、感じ方が少しずつ麻痺していき、エネルギーが全て奪われてしまいます。この関係性は健全なのか?自分にとって良いものなのか?と自問することさえも忘れてしまいますし、たとえその要求に依存心や自分勝手な意図があったとしても、なかなか気付くことができません。
思い通りにならない状況をほんの少し経験することは、成長するために必要な場合もあります。
しかし、不快なこと・理不尽なことに徐々に適応していくことで、あなたの心はゆっくりとダメージを受け、あなたの生活は自分でも気付かないうちにコントロールされてしまいます。その結果、自分が本当にやりたいこと、必要としているものは何か、置かれている状況に本来はどう対処すべきなのかわからなくなります。
そのため、起こっていることをしっかりと見据えて、自分が本当は何をしたいのか、いつも意識することが大事です。これは、不快な状況に慣れ、知らず知らずのうちに考えや行動が縛られてしまうことから自分を守る唯一の方法と言えるでしょう。
あなたが、自分自身の正当な権利を大切にし、それに基づいて物事を判断することを、あまり良く思わない人たちも時にはいます。あなたを自分に従わせたいと思っている人たちは、あなたの変化や成長を歓迎しません。
そういった人たちにははっきりノーと言い、あなた自身が充実した毎日を送ることや、あなたの自尊心や尊厳、好奇心を守ることを何よりも大事にしましょう。
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この記事でご紹介したボイルド・フロッグ症候群について心に留めておき、あらかじめ防ぐことができるような悩みや苦しみに陥ってしまうことがないよう、自分自身の気持ちをいつも大事にしてください。
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