心の傷と共に生きるということ
時間の経過は、時に心の傷を癒し、痛みを和らげ、物事を相対的に見るための助けとなります。
しかし、心が深く傷つく原因となった体験は、思い出すときに伴う心の痛みが少しずつ薄れていくことはあっても、その記憶が完全に消えてなくなることはありません。
「時間がどんな傷も癒す」という言葉をよく耳にします、過去の苦しい体験から何かを学ぶことには、一種のセラピーのような効果もあります。
しかし、心がつらい出来事を完全に忘れ去ることはありませんし、心の痛みを伴う経験から学んだからといって、その痛みが必ずしも消えるわけではありません。時間が、傷を100%癒すわけではないのです。
むしろ学ぶどころか、つらい経験をただ受け止めなければならないと感じることも多いかもしれません。また、体の痛みとは違って、心の痛みに麻酔をかけることはできません。
しかし、「何事も永遠には続かない」―今のつらい状態が永遠に続くわけではないということもまた事実です。また、明日起きることは誰にもわからない―今は悩みや苦しさで心が一杯になっていても、明日思いがけず状況が変わることもあるでしょう。
今回の記事を通して、心の傷と共に生きることについて考えてみましょう。
心の傷
愛する人と別れること、ストレスやプレッシャーで心が追いつめられること、友情が終わること、誰かに裏切られること、成功したいと願った何かで失敗すること…時に私たちは、こういったつらい出来事を経験することがあります。
「人生を真に理解するには、つらい経験をしなければならない」という言葉はもっともらしく聞こえますが、笑顔で楽しくいられるなら、それに越したことはないでしょう。私たちは幸せな経験からもさまざまなことを学びますし、嬉しい気持ち、楽しい出来事は前に進む力にもなります。
しかし私たちは、つらい経験や、それを通して負った心の傷に「とらわれて」しまうことがあります。
たとえ出来事そのものは過ぎ去っていても、あまりにも心の痛みが強く、前に進めなくなってしまったときや、苦しさに支配されてしまいそうなとき、私たちには何ができるでしょうか?
こちらの記事もご参考に:辛い時に繰り返したい5つの言葉
寂しさと共に生きる
過去のつらい出来事を、無かったことにしてやり過ごすための魔法や、心の傷を完全に消してしまう薬はありませんし、その出来事よりも前の日に、タイムマシンで戻ることもできません。
- 心の傷は、好むと好まざるに関わらず、ただそこにあります。時間は、完璧に傷を癒してくれるわけではありませんが、徐々に痛みを和らげることや、心の傷と共存することの手助けをしてくれます。
- 私たちの誰もが、大事な人との別れや、誤った判断をしてしまったという後悔などを経験し、寂しさと共に生きることを学んでいきます。
- 必要なのは、つらい経験に心をコントロールされないようにすることです。自分を追い詰めたり、自分は無力だと思い込んだりしてはいけません。「人生は無意味だ」「私は幸せになれない」などという間違ったことは決して言わないでください。
心の傷と付き合っていくには、起きたことを、既に終わった出来事として受け止め、今後について考えていくことが鍵となります。
こちらの記事もどうぞ:孤独を恐れず一人の時間を楽しむ9つの方法
自分を愛する
毎日は慌ただしく過ぎ去り、冷たく無情な波があなたを押し流そうとするように感じることもあるかもしれません。
大事な人との別れが訪れることや、毎日精一杯生きているのに、理不尽な出来事に傷つくこともあるかもしれません。
しかし、あなたのせいで起きたわけではない出来事についてずっと思い悩んでいても、心の傷は癒えません。
つらい経験をしている間は、自分をいたわること、自分を愛することを忘れがちになります。
しかし、起こったことや、自分の心への影響を冷静に見つめること、自分には幸せになる価値があると思い出すことは、心を癒すための最良の手段の一つと言えます。
- もし愛する人との別れを経験したら、その人との思い出はずっと心の中に残るということ、やがて笑顔で思い出せるようになるということを忘れないでください。
- もし誰かがあなたを傷つけても、そのことを何度も思い返して心のダメージをもっと大きくするようなことは、できるだけ避けましょう。心とは本来自由なもので、自分以外の何ものにもコントロールされるべきではありません。起きたことを冷静に見つめ、ネガティブな考えをできるだけ振り払い、心を縛られないようにしてください。
たとえ心の傷が完全に癒えることはないとしても、あなたの心はそれに立ち向かっていくことができます。
自分は必ずまた幸せになれる、自分には愛される価値があるということ、人生には無限の可能性があるということを、いつも心に留めておきましょう。