母と娘の感情的な深い結びつき

11月 9, 2016
母と娘は、記憶や感情をコントロールしている「大脳辺縁系」と呼ばれる脳の構造が類似しているという科学的な研究結果に加えて、心理学的にも深い心の絆があると考えられています。

私たちが人生において、どのような教育を受け、愛情を与えられたかという環境的な要因を越えたところに母と娘の深い結びつきは存在します。

「サイエンス・デイリー」誌で「感情を司る脳回路の構造は母親から娘に受け継がれる可能性が高い」という興味深い研究結果が発表されました。

この研究結果により、神経科医、精神科医、そして心理学者は、鬱病のリスクの高さなど、ある一定の疾患や症状を発症する傾向を、予測診断できるようになりました。

注意していただきたいのは、カリフォルニア大学で行われたこの研究は、母親が発症した気分障害などの疾患を、娘が発症する可能性を示唆しているだけであり、母親が鬱病や不安発作に悩んでいるからといって、娘が必ず同じ症状を発症するということではありません。

女性というのは逆境に立ち向かう時や困難な状況に直面した時、予期しないほどの強さや力を発揮することがあるものですが、これは、母から娘へと受け継がれる素晴らしい力なのです。

それでは詳しく見ていきましょう。

目に見えない母と娘の絆

偏頭痛、線維筋痛症 、そして鬱病は、男性よりも女性の方が発症しやすいと言われるように、一部の疾患は「性別」によって発症率が違うことが、近年明らかになっています。

全身に強い痛みを感じる線維筋痛症の患者は、男性より女性の方が多いといわれています。

私たちが痛みを感じる時に活性化する脳の領域は、扁桃体といいます。研究者によると、痛みを感じている時に、男性は右の扁桃体が、女性は左の扁桃体が活性化しているのだそうです。

右の扁桃体は、体の外側で起こる物事をコントロールする脳の部位につながっており、左の扁桃体は、体の内側をコントロールする脳の部位につながっているため、男性よりも女性の方が痛みを感じやすい理由も、ここにあるのかもしれません。

ただし、科学的にはまだ証明はされていません。

痛みの感じ方については、まだはっきりと証明されていませんが、母と娘が持つ複雑な「感情的な結びつき」は、科学的にも証明されています。

 

2-child-in-womb

大脳辺縁系

まずは、私たちにとって大変重要で、力強い働きをする脳の構造、特に大脳辺縁系についてお話しします。私たちの記憶や感情をコントロールしている大脳辺縁系は、私たちの感情を描きだす芸術家とも表現されます。

  • 大脳辺縁系は、人間の脳内で情動の表出などを司っています。さらに記憶や自律神経、また各個人が発達させる本能などと関連しています。
  • 大脳辺縁系は、ヒップカムポスと呼ばれる海馬の一部や、扁桃体のような機能により次々に形成されています。
  • また、恐怖心や記憶を統合する能力などを司るともいわれています。
  • 前述の研究を行った、児童・思春期の専門家であるフミコ・ホーフト(Fumiko Hoeft)医学博士に率いられた研究チームは、近親者(母と娘、父親と息子など)間で脳の様々な構造に類似性がないか調べました。
  • 被験者の身体に器具や医療道具などを入れないで身体の中の様子をX線などで観察する、様々なMRIテストから、母親と娘は、感情と密接に関連している大脳辺縁系の灰白質の容積に類似性があることがわかりました。
3-brain-health

母娘で同じ精神的な問題に苦しむ「素因」

再度繰り返しますが「素因」は、気分障害を発症する直接的な原因ではありません。危険性や可能性が高いということです。
医学的に大切なことを以下でご紹介します。

  • ストレスや鬱などの気分障害は、ドーパミン、副腎髄質ホルモン、エピネフリンなど、遺伝的な要因によらない個体の変化による、神経化学的な活動に起因しています。
  • つまり、母と娘が同じ脳の構造を持っているとしたら、同じような刺激を受けたり、問題や困難な状況に直面した時には、大脳辺縁系回路は同じような反応をするメカニズムだと考えることができます。
  • これらのデータは、母と娘の遺伝子要素に基づいて一部の気分障害を予防するのに役立つと言われています。
  • 精神面や感情面では母と娘は似ている部分もあります。

 

4-mother-and-twins

ただし、これらの研究から短絡的に「娘は母親のコピーである」と考えるのはまったく間違っています。

例えば、母親が高血圧、糖尿病、静脈血栓症、または肥満などを発症していても、娘に同じ疾患が遺伝する可能性が100%あるわけではありません。

 

今回ご紹介した情報を、ぜひ正しくご理解ください。特に以下の点にはご注意ください。

  • 娘は母親のコピーではありません。お互いの生活環境、教育、性格、態度、そして価値観などは母と娘で大きく異なることがあるのはもちろんです。
  • 母親が、毎日暗い部屋で過ごし、複雑な気分障害を患っているのを娘が目にしながら育つと、子供は母親のように「翌日を迎えたくない」とは考えないように気をつけようと意識しながら、母親を反面教師として成長する場合もあります。
  • 気分障害を発症する「素因」は間違いなく存在しますが、育ってきた環境から、困難に打ち勝つ力を身につけ、鬱病などの気分疾患にならないように、より強く育つことも多いです。

結論として、大脳辺縁系として知られている脳回路の構造は、母親から娘へ受け継がれる可能性が高く、それが感情面や精神面にも影響を及ぼすことがあります。また自閉症や難読症などは遺伝子上の父親から受け継ぐ可能性が高いと言われています

 

あなたへおすすめ