ネガティブ思考が病気へとつながるとき
悲観的な姿勢は、精神的・身体的健康の悪化に関係しています。ここでの疑問は、どのようにネガティブ思考が病気へとつながっていくのか、ということでしょう。
近年、心と体の関係について書かれた書物をよく目にします。それらの多くは、私たちが思っている以上に心と体が密接に関係しているということを説いています。
次に、このつながりのメカニズムについて見ていきましょう。
疑問:私たちの思考が病気へとつながる?
近年の研究の多くが、心の状態が良いほど体の健康も良いことを示しています。これを裏付ける一つの例が、アンドリュー・ステップトー教授のチームが行った分析です。
私たちの思考が秩序や希望などで満たされていると、神経系の働きを通してそれが体の健康へとつながると考えられます。
だからこそ、私たちの頭がネガティブ思考で満たされていると、病気にかかりやすくなるという観察結果も出ているのです。さらに、不安感や鬱が様々な形で体に影響することを考えると、この心身の相互関係がより興味深く感じられるでしょう。
では、さらに詳しく見ていきましょう。
思考が病気へとつながるとき:ストレス反応
不安を感じるとき、おそらく普段よりも動悸が強く早くなるのをあなたも感じるでしょう。手が震えたり汗をかいたりもします。
こういった症状は全て、その時の脳の働きに応じて 特定の身体反応が引き起こされるために起こります。例えば、心拍、呼吸、瞳孔の開き具合などの変化として現れます。
別の言い方をすれば、ストレスは運動した時と同じように体に変化を与えるということです。しかし、実際に体を動かしているわけではないので、体のエネルギーを正しい目的に使えない、という点が大きく違っています。
比喩を使って説明してみましょう。多くの車が高速道路を走っている様子を想像してみてください。ここで高速道路が前触れもなく途切れ、突然普通道路に入っていくとしたら…。これでは、おそらく事故へとつながるでしょう。これと同じことが体にも起こるのです。
先に進めないのに、心臓からは絶えず車が送り出されています。この状況が一瞬であれば、渋滞はそれほどひどいものではないかもしれませんが、これが長期間続くと、体に与えるダメージは相当なものでしょう。
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病気へとつながる思考は行動にも表れる
ここまでは、私たちの思考が体に直接的に引き起こす反応を見てきました。しかし、思考は私たちの行動にも表れます。ここで一つの例を見てみましょう。
私たちは皆、時として不幸せに感じたり、やる気を失う瞬間があります。そのような時には、セルフケアをおろそかにしがちです。特に、まず一番最初に影響を受けるのは食生活でしょう。
あまり好きではない食べ物、これは通常、体に良いものが多いのですが、まずそういった食べ物を食べなくなります。そしてよりおいしいけれど体に悪いものに手を伸ばしてしまいます。
これはどうしてでしょう。実は、バランスの問題です。生活の中で得られない満足感を食べ物で得ようとしているのです。残念なことに、女の子が彼氏に振られた時、一人でソファに座ってアイスクリームを箱から直接食べているイメージは本物なのです。
また、モチベーションを失うのも悲しいときによく見られる症状です。この時、今まで普通に出来ていたことがずっと難しく感じられます。毎日のルーティーンを簡単にしようとしてしまいます。例えば、仕事の後にスーパーに行って買い物する代わりに、より簡単に済ませるためにピザを頼んでしまう、などです。
心に抱える問題が原因で起こるこのような行動は、私たちの健康にも害を与えてしまいます。
Rai Ajit K. Srivastava教授(ウェイン州立大学、アメリカ)の研究では、糖尿病、心臓血管系の病気、肥満などがこのような行動の結果として挙げられています。
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視点を変えて見てみると…
ここまでを読んでみて、私たちの体の状態を理解するためには、気を付けるべき点がいくつかあることがお分かりいただけたでしょう。
不快感から起こる体の反応、またはそのような気持ちに対処しようとして私たちが無意識にとる行動の両方の影響について見てきました。どちらも、様々な異変や病気の原因となりえるものです。
しかし、様々な理由でネガティブ思考が病気へとつながる一方で、前向きな姿勢が健康やストレス減少につながることも事実です。
心を最高の状態にして健康を向上したい時には、楽観的な姿勢、周りの人々のサポート、活動的なライフスタイルなどを心がけることを覚えておきましょう。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
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