否定型うつ病:診断の難しい病気
最近は、新型うつ病、非定型うつ病な どさまざまなうつ病が話題になっていま す。病気の症状もさまざまで、原因も違 いますし、治療の方法も異なります。ー精神科医 仮屋暢聡医師(全国精神保健福祉会連合会冊子より)
今日、ここでご紹介する否定型うつ病は、 疲労、ストレス、代謝異常などと非常に症状が似ている為、診断が非常に難しいと言われています。本人は自分が病気であるということに気がつかないことも多く、ただの疲れや少し体や気持ちが辛い時期にあるだけだと考えている場合があります。
それでは、今回は否定型うつ病の知っておくべき性質をお話していきましょう。
否定型うつ病、魂が苦しみ体に影響を与える
医療従事者が、うつを診断するときに注目する症状があります:ネガティブな気持ちが続く、無力感、眠れない、自殺願望です。
そして、そこからさらにうつ病の種類を詳しく診断します。それからどの薬を投与すべきかやカウンセリングなどのセラピーの方向性などを決めていきます。
ところが、否定型うつ病は患者さんが自殺願望を見せるまではなかなか明確にはなりません。自殺願望は、患者さん、そして家族が医師に助けを求める為の最初のきっかけだと言えるでしょう。
ですが、そこまで行ってしまう前に、もう既に患者さんの毎日の生活は、目に見えて辛くなっています。
それでは、否定型うつ病の基本的な特徴をご紹介しましょう。
体に出る症状
否定型うつになると、原因が分からないのに体重が増えるという事がよくあります。
普段よりもお腹がすいたり、不安感に襲われたりするだけでなく患者さんの新陳代謝の状態が変わってしまうのです。この事で脂肪が蓄積されやすくなってしまいます。
もう1つ一般的な症状は、疲労感と体の痛みです。この体の痛みは、腕や足などに生じる事が多いと言われています。体が重く感じ、時には動く事すら辛く感じる事があります。
この疲労感は毎日の生活においての家事や仕事へのやる気を喪失させてしまいます。そして、そのうち友人などとの交流すらできなくなってしまうのです。
睡眠過剰
否定型うつ病を持つ人は長時間寝る事ができます。
10時間続けて寝てしまう人もいるほどです。これは疲労感が続き、体が衰弱、そして現実があたかも自分がコントロールのできない夢の中にいるかのように感じてしまう症状を引き起こしてしまう事があります。
こちらもお読みください『睡眠の質に影響を与える要因』
過敏性
この感情障害は、人を気難しくしたり、イライラさせたり、ポジティブな感情を感じなくさせてしまいます。
楽しい事であったり、行事、皆がリラックスしているような時でも自分はどこか遠くから見ているような感覚に陥ります。そしてこれらの状況がうざったくなったり、理解できないと感じるようになってしまう人もいます。
これに加えて、破滅的思考を持ち始める事が多くあります。
新しく何かを始めても全て最悪の結果になるという考えに囚われ、更にその最悪の結果を回避する事は自分では出来ないと考え、行動に起こす事すら無駄であると思い始めてしまいます。
ひどい不安感
重症な不安感は、このうつ病と大きな繋がりがあります。
不思議な話ですが、否定型うつを持つ人達は自分達がどれだけ無防備であるかを自覚しています。さらに自分が無防備である事が嫌だと感じています。そして、この事が自分への拒絶の気持ちを生み出し更なる不安感に繋がってしまうのです。
このうつで苦しんでいる患者さんは疲労感と平穏がある時期とストレス、緊張感、そして不安感の期間を過ごす事があるのが一般的です。
これらの期間の繰り返しは、仕事や社会生活に大きく影響してしまう事は言うまでもありません。
こちらもお読みください『緊張や不安を抑える8つの自然療法』
一体原因はなんなのか?
否定型うつ病は男性にも女性にも同じように襲い掛かります。
もちろん、医師などに助けを求め、病気を把握し、上手にうつ病と付き合っていく人も沢山います。
この否定型うつには、何か1つはっきりと言える明確な原因はありません。色々な要因のある多面的な現実と言えるでしょう。
それでは、このうつ病のきっかけになりうる事柄を見ていきましょう。
原因になるかも知れない事
このうつ病の原因の1つに遺伝があります。
もし、両親がこの病気で苦しんでいたら、高い確率でその子供も何かをきっかけにこの病気を発症してしまう可能性があります。そのきっかけは、大事な人の死、恋人との別れ、トラウマになるような大きな出来事など様々です。
専門家は、この病気は事故や人生の中でのトラウマと遺伝的にうつになりやすい性質という2 つの要因が組み合わさった時に起きると言います。
他にも、色々な事が同時に起きた事がきっかけでこのうつ病を発病してしまう事があります。家族の問題、人生において幸せと感じられない、毎日のストレス、自分で気持ちが落ちそうなときにどうコントロールすれば良いのかよく分からないなど色々な事が考えられます。
治療
この病気を治療するには、多方面からアプローチする事が必要です。投薬、カウンセリング、家族や友人の協力、そしてライフスタイルの変化などが良い例でしょう。
否定型うつは、一般的に2年以上かけて症状が現れたり、消えたりします。
この病気も重症なうつ病の1つである事を忘れてはいけません。この病に侵されている人は、家族や友人の理解、忍耐力、そして思いやりを必要とする困難に立ち向かっているのです。
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