心血管系の健康に役立つ食品中のミネラルについて
現在、世界で主流となっている食事は西洋の食事で、飽和脂肪酸、ナトリウム、砂糖が豊富に含まれているのがその特徴です。そして、野菜、果物、種子の摂取量が、毎日の推奨摂取量を下回るため、体内のバランスを保つミネラルが不足しがちです。
しかし、食品に含まれるミネラルが心血管の健康にとって重要なのはなぜでしょうか?
世界保健機関(WHO)によれば、心血管疾患が世界の主な死因の一つです。心血管疾患を効果的に予防し、万が一発症しても早期に治療を開始するために、定期的な身体活動と併せて健康的な食生活を維持することを、心血管疾患の予防や薬理学治療の補助療法としてWHOは推奨しています。
心血管疾患とは何ですか?
心血管疾患は、心臓病、脳血管疾患、および血管系の疾患を含む疾患のグループです。毎年、世界中で1700万人がこれらの疾患が原因で死亡しています。世界保健機関( WHO)によると、これらの疾患に起因する死亡の80%は、患者が健康的なライフスタイルを守り、危険因子を減らすことで予防できたと指摘されています。
心臓病の発症に関わる主な危険因子
脂肪、精製された小麦粉、砂糖の過剰摂取は、心血管疾患の発症に深く関連していると言われています。
食生活の悪さと有害な健康習慣は、アテローム性動脈硬化症の発症に直接関係しています。この疾患は、動脈にアテローム性プラークと呼ばれる沈着物が形成されて、適切な手術ができなくなることもあります。
アテローム性動脈硬化症の発症を引き起こすいくつかの要因をご紹介します。
- 行動面の危険因子:喫煙、運動不足、塩分と脂肪の多い食事、およびアルコール依存症
- 代謝危険因子:高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、過剰な体重、肥満
代謝性疾患は行動面の危険因子と密接に関連しています。西洋食は脂肪組織の過剰な蓄積と関連しており、これは個人の体重増加に反映されています。過剰な体重と肥満は臓器機能を変化させ、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの疾患を引き起こします。
心臓病の発症を予防するためには、食生活を変えて運動を行いながら、健康的なライフスタイルを実践していくことが不可欠です。栄養面で推奨される特定の栄養素は、代謝障害の調節に役立つだけでなく、多くの危険因子を制御し、心臓を保護する効果を発揮する食事計画の作成に役立ちます。数多くある食事療法の中で最も知られているのは、高血圧症を食い止める食事療法であるDASHダイエットです。
心臓血管の健康のためのDASHダイエット
アメリカ国立心肺血液研究所(NHLBI)は、DASHダイエットと呼ばれる食事療法を開発しました。この食事療法には、全体として、次のような特徴があります。
- 野菜や果物を大量に摂取する
- 精製された穀類を全粒穀物へと置き換える
- 動物由来の脂肪や食品の摂取量を適量に抑える
- 砂糖が大量に添加された食品は、時折摂取するか全く摂取しない
一般的に、この食事療法は心血管イベントの発症に関する主な代謝因子を効果的に調節します。多くのメタ分析では、この食事療法には、無数の健康上の利点があることが示されています。実際の臨床実験では、心血管イベント、血圧、総コレステロール、LDLコレステロール、糖化ヘモグロビン、空腹時の血漿インスリン、さらには体重増加の発生率を低下させることがわかりました。
DASHダイエットの有益な効果は、食品中の他の栄養成分の生物学的作用に関連しています。これらには、抗炎症作用と抗酸化作用を持つフラボノイドと、血管に良い効果を与える食品中のミネラルが含まれます。
ぜひご覧ください:見逃さないで! 心臓発作の前兆
心血管系の健康維持に役立つ食品中の主なミネラルとは?
カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルが豊富な食品は、心血管系の健康維持に役立ちます。
多くの栄養素は心血管系の健康維持に良い影響を与えます。 ここでは、高血圧に関する研究でも強調されている、心血管系の健康維持に有益な、食品中のミネラルに焦点を当てます。
心血管系の健康維持に役立つ食品中のミネラル:カリウム
カリウムは、レニン-アンギオテンシン系と相互に作用して、網膜の血漿活性を変化させることで、血圧の上昇を防ぎます。また、腎臓におけるナトリウムの排泄にも関わっているため、血管内皮機能不全マーカーを低下させます。
カリウムが豊富に含まれている食品には、ほうれん草、トマト、ズッキーニ、マッシュルーム、バナナ、ナッツ、アボカド、チアシードなどがあります。
マグネシウム
マグネシウムというミネラルは、血管平滑筋の収縮の阻害剤として作用し、血管の拡張にその効果を発揮します。その結果、血液はより低い圧力で静脈と動脈を流れます。
マグネシウムが豊富な食品には、ナッツ、ダークチョコレート(70%カカオ)、そして全粒穀物などがあります。
カルシウム
最後に、カルシウムは、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)として知られている薬物と同様の効果があるため、血管の収縮を阻害します。また、腎臓でのナトリウム排泄においてカリウムと一緒に効果的に作用します。
カルシウムが豊富に含まれている食品には、乳製品、脱脂粉乳、イワシ、アーモンド、ひよこ豆などがあります。
野菜、果物、全粒穀物など、栄養が豊富な食生活を維持し、動物由来の低脂肪食品を適度に摂取することで、心臓を保護するのに役立つミネラルやその他の栄養成分の必要量を摂取することができます。また、体内を最適な状態で機能させながら、心臓病の発症と関係があると言われる主要な代謝危険因子をコントロールするのにも役立ちます。
まとめ
管理栄養士に、栄養面の適切な診断と食生活の評価を受けて、自分のニーズを満たした健康維持に役立つ、個別の食事計画を立てることが大切です。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
- Boles A., Kandimalla R., Reddy PH., Dynamics of diabetes and obesity: epidemiologicaal perspective. Biochim Biophy Acta Mol Basis Dis, 2017. 1863 (5): 1026-1036.
- Chiavaroli L., Viguiliouk E., Nishi SK., Mejia SB., et al., DASH dietary pattern and cardiometabolic outcomes: an umbrella review of systematic reviews and meta analyses. Nutrients, 2019.
- Bazzano LA., Green T., Harrison TN., Reynolds K., Dietary approaches to prevent hypertension. Curr Hypertens Rep, 2013. 15 (6): 694-702.