痛みを伴う記憶は消し去ることができるのか?
人生の中で悲しみを伴う辛い経験をすることがあります。
健康的で平穏な生活を心がけていても、過去の辛い出来事や悲しい記憶が原因で、いつも何らかの恐怖心や痛みが現れることがあります。痛みを伴う辛い経験や記憶を消し去ることは可能なのでしょうか?
記憶とは?
英語では「メモリー(Memory)」という単語を使う記憶ですが、これはラテン語の「心を通じて戻る」という単語をルーツにしています。
つまり記憶とは、過去のある状況や出来事が想起される思いなどを呼び起こすことです。
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記憶が存在する目的とは?
思い出や記憶は人生を整理するのに役立ちます。
思い出や記憶がなければ、経験を保持しながら毎日の生活や人生に応用することができず、常にすべてのことを最初から新しいものとして学ばなくてはいけないため、人生を送るのが非常に困難または不可能になります。
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脳はどのように記憶するのか?
心は、様々な種類の記憶を「セット」にして、脳で記憶して保存します。
記憶するときのプロセスは複雑ですが、このプロセスを単純化して「短期記憶」「長期記憶」「感覚記憶」の3つに分類して説明します。
感覚記憶
感覚を通じて体験することを記憶するプロセスです。
非常に短時間に保存される記憶ですが、その後短期記憶の一部にならない限りは消え去ります。
短期記憶
感覚記憶として保存された経験の中から選択して、短期記憶として保存されます。
ここに分類されるものは操作可能メモリとも呼ばれ、全体として一度に5~9程度の要素を含んで記憶します。
長期記憶
私たちの心に刻まれる、長期的または永続的に保存される記憶で、本記事でご紹介する「痛みを伴う記憶」もここに保存されています。
長期記憶は、暗黙的記憶と明示的記憶に分類することができます。
暗黙的記憶は、無意識の記憶を保存する学習に関連する記憶で、このタイプの記憶により「自転車を運転する」「車を運転する」などの特定の活動を行うことができます。
二つ目の明示的な記憶には、意味記憶とエピソード記憶の2種類がありますが、どちらも意識的な活動と深く関わりあっています。
意味記憶は歴史的、科学的、地理的、そして空間的な知識や記憶を指し、人々の名前もここに保存されます。
そしてもう一つのエピソード記憶こそが、今回の記事でご紹介している痛みを伴う経験が記憶される場所です。自分自身に起こったエピソードや特定の事実、結婚式や卒業式などの楽しい思い出、または喧嘩や辛い思い出などがここに記憶されます。
痛みを伴う記憶を消すことはできるのか?
誰もが辛く苦しい出来事を経験しますが、多くの人がその記憶を適切に処理し、前に向かって進みます。
しかしこの処理の過程が複雑になることがあります。例えば過去の出来事が原因でうつ病や心的外傷後のストレス障害を発症して症状が深刻化することもあります。
神経科学によると、記憶を忘れられるかどうかに関わらず、記憶が保存される方法はそれぞれのメモリがどう統合されるかによって決定します。
この分野の研究から、ある特定の経験から回復するとき(または記憶しているとき)に私たちは不安定になるかまたは適応するかのどちらかであることがわかっています。
またこれにより、新しい情報を追加することができるため、最初の記憶から徐々に変更されます。
つまりこのメカニズムにより、痛みを伴う記憶や外傷性の記憶が修正され、その結果としてこれらの記憶に関わる感情面での反応も徐々に変更されます。
否定的な感情
心理療法は、痛みを伴う経験や事実を再解釈するのに役立つため、否定的な感情を解消する効果があります。
過去の辛い経験による苦しみを軽減するためにも、情報を追加または交換することで辛い記憶が持つ意味を変更することが大切です。
現在科学者たちは、痛みを伴う記憶に悩まされている患者をサポートする薬を開発しています。
ストレスホルモンであるコリチゾールの産生を阻害する物質を作り出すことにより、痛みを伴う記憶を解消する働きがあると考えられています。
ただし、記憶に関連する研究のほとんどの理論は、過去を変えることはできないという事実と現実を受け入れて理解することの大切さを示唆しています。
痛みを伴う過去を変えることはできませんが、過去の記憶に対する視点に変化を与えることで、どれだけ心を傷つけた経験であっても、そこから学ぶべき正の教訓があることがわかります。
また痛みを伴う過去についていくつかの視点を得る方法を探すことが重要です。それがどんなに強いか外傷性であったかにかかわらず、常にあなたに教える正の教訓があります。
最後に、許すことが重要です。許すことで過去の思い出は過去に残すことができ、最終的には痛みを伴う記憶を克服できます。
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