現代の桃源郷?/がんのない村の秘密とは

9月 26, 2016
このがんのない村では、住民たちがラロン症候群に罹っています。このため、細胞分裂が行われず、その結果がんにかからないのです。

現代社会の最も大きな心配事のひとつが「がん」であることは、疑いの余地がありません。科学者や医師たちは、ただその発症を食い止めるためだけでなく、より多くの治療オプションを患者たちに提供するために、がんのメカニズムを解明しようと努力してきました。

もし世の中にはがんにかかる心配がない人々がいると聞いたなら、信じられないかもしれません。

でも、それは事実なのです。今回は、がんのない村として知られている美しい土地、エクアドルのビルカバンバ・バレーについて、ごいっしょに学んでいきましょう。

がんのない村

この驚くべき村についてもう少し理解するために、ラロン症候群という遺伝子疾患についてお話する必要があります。

ラロン症候群とは、稀な遺伝障害で、身長が伸びないことが特徴です。また、この遺伝形質を持つ人は、がんと糖尿病100%かからないということでも知られています。

以下、もう少し詳しくお話します。

世界中で350人の患者がいるラロン症候群

ラロン症候群(またはラロン型低身長症)は、1950年代に、イスラエル出身のズヴィ・ラロン医師によって最初に発見されました。ラロン医師は、イスラエルの小さな村に住んでいた、非常に背の低い患者たちのグループに関心を持つようになったのでした。

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低身長のこの人たちは、同時にすばらしい健康に恵まれていました。どんなものを食べても決して糖尿病に罹ることはなく、祖先を含む誰ひとりとして、がんに罹ったことがなかったのです。

ラロン医師は30年以上の調査研究の後、2001年にこの興味深い症候群のメカニズムに関する研究結果を発表しました。大まかに言って、その重要ポイントは以下のとおりです:

  • ラロン症候群は、世界中で350人の患者が報告されています。その大部分がエクアドルのロハ県ビルカバンバ・バレーに住んでいます。残りはイスラエルと地中海沿岸の国々の住民です。
  • この遺伝子疾患のある人々は、非常に背が低く、90cm以上になることはめったにありません。
  • 共通の症状として、低身長に加え、特定の人相的特徴が見られます。
  • 一般的に、低身長症の原因は成長ホルモンの分泌不全です。しかし、ラロン型低身長症の場合、成長ホルモン(GH)は正常値を示していますが、インスリンと密接な関係があるIGF-1と呼ばれるホルモンが不足しているため、成長ホルモンが体各部で平等に代謝されなくなり、身長が伸びなくなるのです。
  • この症候群は、父親と母親の両方が異常のある遺伝子を持つ場合にのみ発症します。

ラロン症候群はがんと糖尿病を防ぐ

この遺伝子疾患を持つ人たちは、正常な生活を送っています。身長がいちじるしく低いほかは、どんな病気や身体的問題も経験しません。

彼らの多くは不健康な食生活を送っており、高脂肪で、油で揚げた、砂糖をたっぷり使った食べ物を食べていますが、糖尿病やがんに罹ることがないため、医師たちを驚かせています。

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ラロン症候群が発見されて以来、この遺伝疾患を持つ人たちの中で、がんや糖尿病にかかったという人はひとりもいません。その理由としては、以下のような点が考えられます:

  • すべてのカギは肝臓と、成長ホルモンの分泌を遅らせるホルモンとにあります。
  • IGF-1は、子供たちの成長に欠かせないだけでなく、大人になってからも細胞分裂を促す働きがあります。つまりこのホルモンは、がん細胞の転移を助ける可能性もあるのです。
  • ラロン症候群の患者は、インスリン感受性が高いため、糖尿病や代謝に関するその他の病気に罹りにくくなります。
  • この人たちの最大の問題は、子供時代に起こります。正常に成長することができないからです。
  • しかし、いったん大人になると、IGF-1の分泌不全が、逆に現代社会で最もよく見られる二つの病気—がんと糖尿病—を予防するためにすぐれた働きをします。

科学への挑戦、ラロン症候群の患者たちの希望

がんや糖尿病に罹ることはありませんが、ラロン症候群の患者たちの生活は幸せいっぱいというわけではありません。

歴史家たちは、これらの人々はキリスト教に改宗し、16世紀に南アメリカに移住した、スペイン系ユダヤ人の子孫かもしれないと考えています。

彼らは、ほかの人たちと「ちがっている」という社会的な烙印を押され、常に世間からの嘲笑を浴びてきました。

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今日、科学者たちはこのホルモンのメカニズムを解明し、がんの発症を遅らせる画期的な医薬品を創り出そうと努力しています。

今のところ、実験は研究室内のみで行われている段階です。

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一方、ラロン症候群の患者たちも希望を与えられています。子供がラロン症候群と診断された場合、人工のIGF-1ホルモンの投与を受けることが可能となりました。問題はその費用で、年間に2万ドル(約200万円)近くかかります。

ビルカバンバ・バレーに住む多くの人々にとって、それは手の届かない金額です。がんのない村に住むこれらの人々の将来が明るいものとなり、がんの治療薬の研究が近い将来に実を結ぶよう祈らずにはおれません。

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