分娩誘発とその方法
人工的に子宮収縮させて分娩を誘発させるのが分娩誘発であり、産婦人科医や専門医は、ある特定の状況においては分娩誘発を実施します。
本記事では、分娩誘発について知っておくべき大切なことをご紹介します。
分娩誘発
自然に陣痛や出産が始まる自然な分娩とは異なり、薬物などによって人為的に分娩の誘発を行うのが、分娩誘発です。
一般的な出産では、自然な陣痛を待ちますが、母体や胎児の安全のために分娩を誘発することが提案されるケースがあります。
医師が分娩誘発を提案する場合
母親や胎児の健康や生命を危険にさらす可能性がある特別な状況では、分娩誘発が推奨されます。
健康や生命の危険の一例をご紹介します:
- 破水が起こると子宮の収縮が始まり陣痛が起こります。これは普通の分娩へとつながります。しかし破水が早い時期に起こり、破水から12〜24時間が経過しても陣痛や子宮の収縮が起こらない場合は、合併症の予防や胎児の安全を確保するために分娩誘発が提示されます。
- 出産予定日を過ぎても陣痛が起こらない場合は、妊娠42週目以降に分娩誘発を検討するように提案されることがあります。
- 母親が妊娠糖尿病や高血圧などの病気を発症している場合は、合併症の予防や母親と胎児の安全のために分娩を誘発することがあります。
- 胎児が胎便を吸い込んでしまうことで起こる呼吸障害である胎便吸引症候群を発症した場合は、胎児の生命が危険に晒される可能性もあるため分娩誘発を行うことがあります。
- 巨大児出産が疑われる場合で、胎児の出生体重が4000gを超える場合は、出産時に母親と胎児の両方が危険にさらされるため、医師が分娩誘発を提案することがあります。
- 残念ながら子宮内で胎児が死亡してしまった場合も分娩誘発で出産を行います。
どの場合においても、母親と胎児の安全と健康を最優先事項として専門医が考え、分娩誘発が最適な方法かどうかを決定します。
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分娩を誘発する方法
専門医が、分娩誘発が最善の方法だと判断し、患者が同意をしたら分娩誘発を開始します。
主に2つの段階に分かれています。
第一段階:子宮頸部の拡張
- 分娩を誘発するには、子宮頸管を少なくとも2~3cm広げる必要があります。
- 医者は、子宮を刺激して収縮を促進するホルモンであるプロスタグランジンなどを投与します。
- 投与されてから拡張までに12〜24時間かかります。
- このため、通常は夜間に投与され、母親は安静にして陣痛や出産を待ちます。
第二段階:羊膜切開またはオキシトシン
- 子宮頸部が広がったら、医師が人工的に卵膜を破り、子宮の収縮を刺激することで陣痛を起こします。
- この時に自然と陣痛が始まらない場合は、オキシトシンを投与することがあります。
- オキシトシンは子宮の筋肉の収縮を引き起こすホルモンであり、静脈内に投与されます。
- ここからは、胎児と母親の心拍数と子宮の収縮をしっかりと観察します。
- 通常、オキシトシンの初回投与量は少なく、医師の指示のもとで徐々に投与量を増やします。
- オキシトシンを投与後すると、突然痛みを伴う収縮が起こることがあります。これは母親だけでなく胎児も痛みを感じるリスクが高まるため、医師は慎重に状況を観察し続けます。
帝王切開を必要とする合併症などがないことが確認されたら、ここからは自然分娩を継続します。
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分娩誘発のリスク
分娩誘発のプロセスは長時間に及び痛みを伴うことがありますが、深刻な合併症を引き起こすことはありません。
母親にとってのリスクは、薬の投与による疲労や発熱を引き起こす可能性があると言う点です。
プロスタグランジンが子宮に投与されてから3cmにまで広がった瞬間から、最大4時間かかります。
また順調に陣痛が起こらないと、前述したようにオキシトシンを投与しますが、ここで必要な時間と分娩までの労力を考えると、非常に長時間の疲労を伴うプロセスとなることは間違いありません。
胎児にとって、この長時間のプロセスを子宮内で過ごすのは安全ではない可能性があるため、医師は帝王切開へと切り替えることがあります。
帝王切開には、いくつかの合併症のリスクが伴いますが、それを考慮しても胎児の安全が優先されるほど危険な場合は、帝王切開となります。
多くの場合は、分娩を誘発した後自然分娩となるため、合併症を伴わない通常の出産を行うと考えてよいでしょう。
分娩誘発は長時間に及びますが、病院の医療スタッフがついているため心配する必要はありません。
医師やスタッフの指示に従ってプロセスを乗り越えれば、数時間後にはかわいい赤ちゃんと対面することができますよ!
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