脆弱X症候群の症状と治療について知っておくべきこと

脆弱X症候群は、最も一般的な遺伝性の精神発達障害として広く認識されています。
脆弱X症候群の症状と治療について知っておくべきこと

最後の更新: 03 3月, 2020

脆弱X症候群は、知的能力や精神の発達に影響を及ぼす遺伝性の疾患で、患者とその家族に多くの課題をもたらす疾患とも言えます。

脆弱X症候群は、遺伝性の精神発達障害の中では最も一般的な形態とされる疾患で、男性は4000人に1人、そして女性は6000人に1人の割合で発症すると考えられています。

各性別の遺伝的構成によって男女の違いが現れると、部分的には解明されています。

女性には2つのX染色体がありますが、男性にはX染色体が1つとY染色体が1つあります。そのため、女性には明確な症状が起こらないこともあります。

つまり、脆弱X症候群の影響を受ける遺伝子が女性が持っている2つのX染色体のうちの1つである場合、影響を受けていないX染色体も同じ遺伝子を含むため、この欠陥を補うことができる可能性を考慮することが重要です。

女性の症状や障害が軽い場合や、症状が全く現れないまま単に保因者になることがあるのはこのためです。

脆弱X症候群の影響を受ける遺伝子はFMR1です。

この遺伝子が破損しているため、FMRPが正しく生成されないか、FMRPが生成されない可能性があります。

そして次の症状が現れます。

  • 知的障害
  • 攻撃性または社会性や人間関係の問題
  • 言語の発達に関する問題

脆弱X症候群には治療法がありませんが、診断が確定されると、リハビリテーションなどの療法を活用して症状を改善する治療が行われます。ただし、様々な問題を完全に治療したり元に戻すことはできません、

脆弱X症候群の症状

脆弱X症候群はさまざまな症状を引き起こします。

主な問題は精神発達障害などの知的能力に関連していますが、それ以外の症状も発症します。

特徴的な症状のいくつかを次にご紹介します。

  • 知的障害:知的障害は軽度から重度までさまざまで、学校教育に大きな影響を与える可能性のある多動と注意欠陥を伴うこともあります。
  • 言語障害:男性の患者により頻繁に見られる症状で、女性での発症率は低いことが報告されています。吃音症や、言語を発する時に完璧に発音できないなどの問題が生じる傾向があります、同年代の子供の平均的な言語発達と比べるとかなり遅れて発達することがあると専門家は指摘しています。中には言語が全く発達しないケースもあります。
  • 身体的な特徴:現段階では、専門医は患者が小さい頃に発症する、脆弱X症候群を疑うべき身体的特徴を明らかにしません。しかし、時間の経過や思春期の到来により、耳の肥大、顕著な額、および扁平足はなどの身体的特徴がより顕著になると言われています。
  • 適応障害:脆弱X症候群を発症している子供は、不安を感じたり、アイコンタクトを避けたり、攻撃的である傾向があります。また、女児においては恥ずかしさがその兆候として現れるなど、社会において適応障害を発症することがあります。
  • 過敏症:感覚的な側面や問題は明確な症状ではありませんが、羞明の兆候や大きな音に対する過度の反応を示す可能性があります。
脆弱X症候群の症状と治療について知っておくべきこと 遺伝子の研究

遺伝的な変化が、脆弱X症候群を引き起こします。

こちらもご参考に:着床前遺伝子診断ってなんですか?:メリットと倫理の関係

不完全X型の脆弱X症候群

脆弱X症候群が、必ずしも「完全」に発症するとは限りません。

脆弱X症候群を引き起こす原因となるFMR1遺伝子の変化が軽度であるか、他のX染色体がそれを補うことができる女性で起こる場合、さまざまな形態が現れます。

一般的な兆候とは異なる以下のような兆候が現れることがあります。

  1. 脆弱X症候群に起因する原発性卵巣機能不全:脆弱X症候群を発症している女性の多くが不妊であり、早期に閉経を迎える傾向がありますし、40歳になる前に月経が止まることもあります。一方、不妊の女性が妊娠している場合は、子供に脆弱X症候群が遺伝するリスクが高くなります。
  2. 脆弱X症候群に起因する振戦/運動失調症候群:ここでは神経系に主な障害が現れます。患者は振戦と呼ばれる急に揺れる症状が起こったり、歩行困難や不均衡に苦しむ傾向があります。また全体として、気分障害とも関連していると言われています。
脆弱X症候群の症状と治療について知っておくべきこと 不妊に悩む女性

不妊は、不完全な脆弱X症候群の形態の1つです。

詳細はこちらから:性別の遺伝的起源:XとYの染色体

治療法

残念ながら、この症候群には治療法がありません。

これは遺伝性の精神障害であり、胚が一度影響を受けると修正することはできませんし、脆弱X症候群を発症している子供の状態を、成長中に元に戻すことはできません。

ただし、脆弱X症候群の症状として現れる精神障害は、リハビリテーションなどの様々な療法でコンロールすることが可能です。

例えば、言語療法は脆弱X症候群を発症している子供の言語の発達を改善し、一般の教育システムに参加するのに役立ちます。

その後、行動面での問題に対して心理学カウンセラーなどがサポートを行い、社会面での人間関係やコミュニケーション力を改善します。

脆弱X症候群を発症しているとわかったら、幼児期から正しいカウンセリングやセラピーを実施することが大切です。

少なくとも3歳までは、資格と経験のある専門家の特別な支援を受ける必要があります。

脆弱X症候群の団体や患者の家族の多くは、この病気に対する世間の認識を高めるための活動を行なっています。

患者にとってより友好的な社会を実現するための第一歩はこの病気について理解することです。

今回の記事を通じて病気への認識と理解がを高め、病気への偏見や差別を生み出さない社会になることを願っています。


引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。


  • Coffee B, Keith K, Albizua I, Malone T, Mowrey J, Sherman SL, et al. Incidence of fragile X syndrome by newborn screening for methylated FMR1 DNA. Am J Hum Genet. 2009; 85 (4): 503-14.
  • Artigas-Pallarés, J., C. Brun, and E. Gabau. “Aspectos médicos y neuropsicológicos del síndrome X frágil.” Rev Neurol 2.1 (2001): 42-54.
  • López, Guillermo Glóver, and Encarna Guillén Navarro. “Síndrome X frágil.” Revista de neurología 42.1 (2006): 51-54.

このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。