激しい運動が原因で起こる遅発性筋肉痛(DOMS)
遅発性筋肉痛(DOMS)は、運動後によく起こりますが、これを理由に筋力トレーニングを避けてはいけません。今回は、遅発性筋肉痛が何であるのか、なぜ痛いのか、そしてそれを予防する方法を説明します。
遅発性筋肉痛とは何ですか?
遅発性筋肉痛の症状は、運動後の筋肉痛と同じです。また、次のような症状が現れることでも知られています。
- 筋痛
- 筋肉痛
- 筋肉の熱
このタイプの痛みは、激しい運動、または慣れていない運動をしてから24時間または48時間後に現れる傾向があります。この痛みは通常、運動などで使用した筋肉に生じ、筋肉強度の低下や動作範囲が、短期間狭くなる可能性があります。
遅発性筋肉痛について知っておくべきこと
基本的に、遅発性筋肉痛(DOMS)とは運動後に起こる筋肉痛で、身体活動の24~48時間後に現れます。
遅発性筋肉痛は、運動後、そして次のような通常の運動強度の範囲外の様々な身体活動の後に発症することがあります。
- 座りがちな生活を送る人のジムでの初日
- 非常に激しいトレーニング
- 重いものを持ち上げるとき
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筋肉痛と炎症
遅発性筋肉痛は、運動後に筋線維が壊れたことで起こる炎症が原因だと考える人がいますが、次の理由により、これは間違った見解であることがわかりました。
- Journal of Physiological Sciencesに発表された研究によると、炎症のない痛みがある可能性が示されています。
- 2016年にFrontiers in Physiology誌に発表された別の研究によると、無痛の炎症の可能性が指摘されています。
したがって、炎症は、遅発性筋肉痛の痛みに直接関係していない可能性が指摘されています。現在の仮説は、このタイプの炎症は、新しい動きや運動強度の増加など、未知の刺激に対する免疫系の反応であるというものです。ただし、より適切な結論に達するために、研究者たちはさらに詳しい研究を続けています。現段階では、結論が出るまで待つ必要があるでしょう。
乳酸による筋肉痛ですか?
乳酸は遅発性筋肉痛を引き起こしません。これは、1983年に発表されたランナーの血中乳酸濃度を調べた2つの実験によって検証されました。
- 傾斜をつけないトレッドミルで45分間走るというこの実験の参加者の一部は、乳酸が大幅に増加しましたが、遅発性筋肉痛を発症することはありませんでした。
- 下り坂のシミュレーションとして、傾斜をマイナス10%の設定して45分間トレッドミルスロープを走った人々は、乳酸の増加はなかったものの、かなりの筋肉の硬直がみられました。
この研究から、乳酸と遅発性筋肉痛の間に関係がないことが示されました。
なぜ遅発性筋肉痛は痛みを伴うのでしょうか?
その原因はわかっていません。痛みが起こる原因を特定する際に生じる問題の1つとして、遅発性筋肉痛は運動していない筋肉にまで広がることがあるという点が挙げられます。
遅発性筋肉痛は、通常運動していない部分や動かしていない場所にまで広がることがあるため、その原因を確立する過程において様々な議論を引き起こしましたが、次に示すように、明らかになっている側面もあります。
- エキセントリック運動と呼ばれる伸張性収縮が起こる動きは、コンセントリック運動と呼ばれる短縮性収縮が起こる運動と比べて、筋肉の硬直を引き起こす傾向が強いと言われています。
- 筋肉の痛みの感受性などには個人差があるため、遺伝の影響があるという意見があります。
- 脱水症状、食生活の乱れ、睡眠不足、激しいマッサージ、痛みへの恐怖心などにより、筋肉痛が悪化する恐れがあります。
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予防法
遅発性筋肉痛を事前に予防することはできませんが、痛みを発症する可能性を減らすことはできます。また、痛みが現れた場合は、次のアドバイスに従うと、痛みの予防やコントロールに役立つでしょう。
- まず落ち着く:徐々に運動強度を上げてください。体を無理に動かそうとしても目標に達することはできません。多くの人が考えていることと実際は反対だと覚えておきましょう。
- 運動を繰り返す数、セット数、およびウエイトの重さを1週間につき10%以上増やしてはいけないというのが一般的な推奨事項です。
- 適切なウォームアップの実践:これまでにウォームアップで良い効果が現れている場合は、ウォームアップだけでなく運動後のストレッチにも十分な時間を取りましょう。
- 正しい食習慣と生活習慣を身につける:健康的でバランスの良い食事、十分な睡眠、十分な水分補給など、適切な食習慣や生活習慣を身に付けることが大切です。
多くの人が考えていることとは反対に、遅発性筋肉痛は乳酸や炎症が原因ではありません。科学者たちは、遅発性筋肉痛の正確な原因を特定しようとしていますが、現段階では、激しい運動をしたり、通常の強度を超えた身体活動をした後に身体に起こる正常な反応だと考えられています。
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