わかりにくい虐待から/自分を守るために
虐待と聞いてすぐに思い浮かべるのは、被害者が受ける身体的、または心理的な暴力かもしれません。しかし虐待には、わかりにくい形で少しずつ人の心を破壊していく、他人に気付かれにくいものもあるのです。
虐待には、攻撃の仕方が直接的でないか、その瞬間はそれほどひどく相手を傷つけていないように見えるために、相手のほうもたいていの場合は受け流してしまうような種類のものがあります。しかしこれが長い間続くと、人の自尊心や自信を破壊してしまうのです。また、注意してほしいのですが、恋愛や結婚のパートナーだけではなく、家族からもこの種の虐待を受ける場合があります。
この記事では、こういった虐待に気付く方法と、自分の身を守る方法についてお伝えします。
どうやって気付くか?
この種の虐待への理解を深めるために、いくつかのわかりやすい例を挙げてみましょう。ある子供が、幼い頃から不器用だったり、落ち着きがなかったとします。そのような子は物を落としやすい傾向がありますが、両親は彼が物を落とすたびにこう注意しました―もし何かを壊してしまったら、それは彼が生まれつき「不器用」なせいだと。
その子が成長するにつれて、両親に言われた「不器用」な面は、試験に受からなかったり、友人をなかなか作れなかったりという形で現れ始めました。両親はその子を愛していますし、虐待をするわけでもありません。しかし彼は一生、自分が人より劣った、生まれつき不器用な人間だと思い込むことになります。これが、長い間に渡って不安感と低い自尊心の原因になる、わかりにくい虐待の例です。
もう一つの例があります。あるカップルは、毎日のようにたくさんの皮肉を口にしていました。彼らは、他人を傷つけて笑いを取ることで知られていて、彼らの皮肉が人を傷つけることには無自覚でした。彼らは決して物事を真剣に受け止めず、全てのことを笑いの種にしていました:誰かの行動、着ている洋服、自分を表現する方法…それらをからかうことに悪意はないのかもしれません。しかしこれは人の心に苦痛を与える、隠れた虐待です。
こういった行動は私たちの生活においてよく見られるもので、いちいち反応するほどのことではないと思われています。しかし、小さなことであっても、それがずっと続くと、誰かの心に癒えることのない傷を与えるため、こういった隠れた虐待を認識することが大切なのです。
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わかりにくい虐待から自分を守る方法
- 言葉は、物理的な暴力と同様にダメージを与えるものです―心の傷もまた痛みの一つです。
- その言葉が無邪気で罪のないものであっても、放っておくのはやめましょう―あなたの感情をはっきりと伝え、その言葉があなたを傷つけるということ、二度と言わないでほしいということを、恐れずに伝えましょう。
- 境界線を引き、バリアを張ることを学びましょう。もし誰かがあなたを困らせることを言ったり、嘘をつくのであれば、そういった人たちから自分自身を守りましょう。世の中には、不親切なことや、真実ではないことを常に口にする人たちがいますが、そういった人たちと一緒に過ごす必要があるのかどうか、自分自身に問いかけてみてください。あなたにとって毒になる人たちは、彼ら自身が不安感と不幸せの中で生きているため、あなたを苦しめることしかできず、一緒にいるのに値しません。
- わかりにくい虐待の最大の問題は、虐待をする側が、彼らの言葉や行動が人を傷つけると自覚していないことです。彼らには自分がしていることがわからないのです。あなたにとっては明らかに害があることでも、彼らにとってはジョークに過ぎない場合があります。傷ついていることをはっきり伝えなければ、彼らはそれを毎日続け、虐待はよりひどくなってしまいます。
- 両親、兄弟姉妹、パートナー、そして同僚さえも、この種の虐待を行う可能性はあります。相手は、あなたを愛し尊重していると言うかもしれませんが、あなた自身の直感を信じましょう。あなたは自分の人格と自尊心を守らなければいけませんし、何があなたを尊重していて、何があなたを攻撃しているか、あなた自身がよく知っていますよね。他人を傷つけ、また他人への敬意に欠けているとしても、自分にはジョークを言う権利があると思っている人たちもいますが、誰かがあなたをそのように扱うのを許してはいけません。何かがあなたを悩ませているなら、それを心に留めておくことで、この先それによって傷つくことを防ぐことができます。また、誰かがあなたの反応を悪く取るとしても、心配しないでください。もし誰かが、自分があなたを傷つけていることを理解できないのであれば、彼らには健康的な関係を築くために必要な共感する力が欠けており、情緒的に未成熟であるということを意味しています。
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- Kiviruusu, O., Berg, N., Huurre, T., Aro, H., Marttunen, M., & Haukkala, A. (2016). Interpersonal Conflicts and Development of Self-Esteem from Adolescence to Mid-Adulthood. A 26-Year Follow-Up. PLoS One, 11(10), e0164942. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0164942