産後の女性が回復するのに必要なのは1年
ラテンアメリカでは「ラ・クアレンテナ」といって40日間の産後回復必要期間が設けられていることで有名です。この「ラ・クアレンテナ」は女性が産後回復に必要とする時期である産後期とよく混同されます。
産後期は、6週間の「ラ・クアレンテナ」よりはるかに長い期間で、9カ月間を要する妊娠と出産から、身体面でも感情面でも回復を必要とする時期です。様々な研究や説によると、産後期というのは1年かかるというものもあれば、2年、あるいは3年もかかるというものもあります。
産後回復に必要な1年間
マンチェスターにあるサルフォード大学のジュリー・レイ博士が2012年に行った研究によると、女性は産後回復するのに最低でも1年は必要だということが分かっています。妊娠中の女性に起こる身体の変化やホルモンの変化は出産した後も止まりません。
また、産後期は母親になるという新しい現実に適応するための身体面での変化や感情面での変化も伴います。レイ博士は出身国の異なる子供を産んだ女性にインタビューを行いました。2、3週間前に子供を産んだばかりという女性もいれば、3か月前、6,7カ月前に子供を産んだという女性も含まれていました。
その中で、母親になったこれらの女性のほとんどが産後、身体面でも感情面でも回復には最低でも12カ月間は必要とすることが分かりました。「女性達は(産後)回復するのに6週間以上はかかると感じています。出産後の援助もたった6週間~8週間だけではなく、もっと長期的な援助を受けられるべきだと感じているのです。」とレイ博士は述べています。
産後期
先ほどの研究では、新しく母親になる女性が産後回復するのに必要とされる期間の推定について述べていますが、有名な書籍「Maternity: Coming Face to Face with Your Own Shadow(母性:自分の分身との対面)」の著者であるアルゼンチンの心理学者ラウラ・グットマンは産後期は子供が2、3歳になるまで続くと述べています。
母親と赤ちゃんは感情で結ばれた1つの共同体です。出産によって、母親と赤ん坊が9カ月の妊娠の間保っていた身体的なつながりが「途切れ」ます。母子はその後一体ではなくなりますが、感情的には一体のままであり、母子がお互いを一個の存在として見られるようになるには時間がかかります。
家族療法士でもあるこのグットマン博士にると、産後期は女性が精神や身体の安定に影響を受ける状況です。母と子が2個の別の個体になった時に生まれるのは強烈な「感情的分離」だったのです。
自分の分身
産後期は、自分でコントロールが効かないものや自分の内にあるもの、そして自分の分身やそれとの衝突といったものと対処しなければならなくなります。とは言え、完全に回復するには、自分が経ているプロセスを自覚する必要があります。
出産という感動的な生命の不思議を体験している最中、腕に抱えているのは面倒を見なければいけない新生児です。この赤ん坊が泣くのは分娩によって引き起こされた母親の痛みと恐怖を表すためです。
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おそらく私達のおばあさんの世代は、子供と家のことだけ面倒を見ていれば良かったのでもっと物事も簡単だったでしょう。しかし最近では、女性はもっとアクティブで独立した存在です。
出産という感動的な瞬間の最中に、母親となる女性は「現実」の世界である仕事やお金といった毎日の心配事から、家や赤ん坊の世話まであらゆることに耐えなければいけません。そうした環境の変化に対して母親の女性や周りも準備が整っていないので、憂鬱な気分にならざるを得ないところがあります。
自分自身に再び向き合う時間がないと…
「こうした複雑な気持ちになる状態に直面すると、女性らしさや職場での生活など、妊娠前には普通にできていた生活を6週間以内で取り戻してくれ、と産後の女性に期待することは不可能だと明確に分かるでしょう」とグットマンは述べています。
実際のところ、母親みんなが幸運なことに身体面も感情面も同時に回復しながら完全に赤ん坊の世話に専念できるというわけではありません。子供を抱え、仕事をしなければいけない状況に置かれている独身女性だって大勢います。つまり、そうした女性には自分自身を再びよく知り向き合う時間がないのです。
さらに、産後回復に利用できる産休制度が自分が暮らす国にはないという場合には、女性は仕事に行っている間、赤ん坊の面倒を見てくれる人を探さなければならず、出産によって引き起こされるやっかいな感情面での課題に向き合う時間は到底ありません。
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働く母親が直面する現実
国際労働機関が推奨する最低14週間の有給産休に則っている国はわずか34ヵ国しかありません。
母親と赤ん坊のニーズに適応していない産休がほとんどですが、例外がいくつかあります。クロアチアは410日間の産休があります。モンテネグロ、ボスニア、アルバニアといった国も365日間の産休があります。イギリスとノルウェーでは315日間です。スウェーデンは240日間あります。
その真逆に位置するのがアフリカやアジアの多くの国で、8週間以上産休が与えられることはありません。女性の産後回復には、赤ん坊との感情的な結びつきに加えて、身体的な側面と精神的な側面が考慮されなければいけません。分娩を終えたばかりの母親と子供のニーズにきちんと適応できるようになるまでには、まだまだ長い道のりなのです。
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