難病に指定されているアジソン病について
アジソン病は、イギリスの内科医であるトーマス・アジソン医師が初めて報告した原発性の慢性副腎不全であるため、アジソン病と名付けられています。
アジソン病を発症するのは非常にまれなことであり、日本では難病に指定されています。
アジソン病の有病率、つまり一般人口の症例数は、10万人あたりわずか4〜6症例だといわっれています。
どの年齢にもアジソン病の症状は現れますが、発症のピークは40歳だと考えられています。
他の多くの内分泌障害と同様に、男性よりも女性の発症が多く見られます。
アジソン病の原因
慢性の副腎不全であるアジソン病について学ぶとき、まずは副腎について、そして体内でどのような働きをするのかについて理解することが大切です。
私たちには副腎が2つあります。
副腎は小さな三角形の臓器で、左右の腎臓の上の後腹膜腔とよばれるところにそれぞれ1つずつあります。
副腎の内部は、2つの部分で構成されています。
副腎髄質
副腎皮質に包まれた副腎髄質は、カテコールアミンのアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンというホルモンを産生します。
副腎皮質
副腎の外層である副腎皮質は、次のようなコルチコステロイドホルモンの産生を担当しています。
- グルココルチコイド:代謝、炎症、ストレス応答機能がある、よく知られたコルチゾールです。
- ミネラルコルチコイド:体内のナトリウム値とカリウム値を調節するアルドステロンです。
- アンドロゲン:男性の性ホルモンです。
アジソン病を発症すると、副腎皮質の破壊が起こります。
副腎皮質がないと、私たちの体内ではコルチゾールとアルドステロンが欠乏します。
つまりアジソン病の症状は、これらのホルモンの欠乏が原因で起こります。
副腎皮質が破壊する原因をご紹介します。
- 自己免疫反応:体内の抗体が副腎を攻撃します。
- 多腺性自己免疫症候群 :体がさまざまな腺を同時に攻撃する自己免疫疾患です。
- 感染症:これには真菌感染症と結核が含まれます。
- 腺自体の腫瘍または他の臓器からの転移がん:これらの症状も副腎皮質の破壊を引き起こす原因となります。
アジソン病の症状
ほとんどの場合、アジソン病の症状はゆっくりと現れます。
これが、アジソン病の診断がとても難しい理由の1つです。
一部の人は、症状を発症していることに気づかない場合がありますし、他の病気と間違えられるケースもあります。
診断が遅れると、患者を生命の危機にさらす可能性もあるため、アジソン病の症状を理解し、何か疑いがある場合はすぐに医師の診察を受けることが大切です。
最も一般的な症状は次のとおりです。
- 食欲減退
- 皮膚の色素沈着過剰、皮膚の特定の領域の黒ずみ
- 低血圧
- 低血糖(低血糖値)
- 無力症(疲労感や衰弱)
- 筋肉の痛み
- うつ病
アジソン病に苦しむの患者一部は、「急性副腎不全」と呼ばれる急性の症状を発症します。
この状態を適切かつ迅速に治療しないと、致命的な症状へとつながります。
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診断と治療
アジソン病を診断するためには、医師はホルモン値を測定する必要があります。
最も簡単な検査は、早朝に患者のコルチゾールとACTHホルモンの血中濃度を測定する検査です。
アジソン病を発症している患者は、一般的に、ACTH血中濃度が高くコルチゾール血中濃度が低くなります。
さらに具体的な結果を得るために、医師は天然のコルチゾールを刺激する検査を行います。人工ACTHを行なって刺激する際の前後に、患者の血中濃度を測定します。
アジソン病患者は、ACTH刺激後も、コルチゾールの血中濃度が増加しません。
アジソン病を発症し、その症状に苦しんでいる疑いのある人は、できるだけ早く医師の診察を受けることが重要です。
医師は、血中のコルチゾール値を検査するスクリーニングテストを提案するかもしれません。
決定的な結果が出ない場合は、ACTH刺激検査を実行して、アジソン病という診断を確定するかアジソン病ではないという診断を確定して、別の病気を疑います。
血液検査が必要になる場合もあります。
アジソン病と診断された場合、基本的な治療として、欠乏しているホルモンを人工的に補給します。
コルチゾールを置き換えるために、医師は合成グルココルチコイドを処方し、アルドステロンはフルドロコルチゾンなども、類似のステロイドに置き換えられます。
また、アンドロゲンに代わるデヒドロエピアンドロステロンなどのホルモンを処方することもあります。
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