ヒマラヤ産ローズソルトの10の効能:それって事実?
ヒマラヤ産ローズソルトは、ヒマラヤのふもと、パキスタンのケウラ岩塩鉱山で産出される岩塩です。健康への様々な有効成分が謳われ、近年非常に人気のある食品です。
実際、これを「地球上でもっとも純度の高い塩」だと考え、一般の塩よりも体に良いと確信する人々がいます。しかし、これはどれほど正しいのでしょうか?実際に健康を改善する効果があるのでしょうか?次に、ここでその含有成分について詳しく説明し、この疑問に答えていきます。
ヒマラヤ産ローズソルトとは
既にお話ししたように、ヒマラヤ産ローズソルトは、ヒマラヤ近くの鉱山でとれるピンク色をした岩塩です。その効果を信じる人々は、ローズソルトが地球上でもっとも純度の高い塩であると主張しますが、これについては疑問も挙げられています。
実際、学術科学雑誌「Science-Based Medicine」に掲載された記事では、そのピンク色が正に不純物によるものだと指摘されています。その理由は、純粋な塩化ナトリウムの色は自然の状態では白だからです。そのため、その色そのものが純粋でないことを示していながら、ローズソルトがもっとも純度が高い塩だと宣伝することは矛盾しています。
塩化ナトリウムは、ヒマラヤ産ローズソルトの主成分です。また含有ミネラル数は84にのぼるとも言われ、体に良いと言われる理由もこれです。
しかし、これも専門家から疑問視されている、または事実でないとする人もいる点です。上にあげた研究によれば、これらのミネラルの多くは、かろうじて検知される程度にしか含まれていません。
さらに、今日までに分かっているのは私たちの体の機能に重要な役割を果たすミネラルは15種類であり、その内の7つは「おそらく必須ミネラルであるが、裏付けはされていない」ものである、ということです。
そのため、これだけ様々なミネラルが含まれているというだけでは、「とても健康に良い」とする理由になりません。むしろ、ヒマラヤ岩塩中の含有量は体に影響のない極微量ですが、水銀、ヒ素、鉛、タリウムといった成分は体に有害です。
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ヒマラヤ岩塩には10の効能がある?
ヒマラヤ岩塩に人気が出始めた当初から、10以上の効能が謳われてきました。さらに、業界では健康と生活の質を改善してくれる「治癒的」効果のある食品としても売り出されてきました。科学的裏付けはありませんが、ヒマラヤ岩塩には以下のような効果があると言われています。
- 体液の滞留をふせぐ。
- 血液のpHを調節する。
- 栄養吸収率を高める。
- 活力を高める。
- 血管、血流の状態を改善する。
- 高すぎる動脈圧を下げる。
- 偏頭痛に効果がある。
- 筋肉けいれんを鎮める。
- デトックス効果がある。
- 睡眠パターンを調節する。
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しかし、栄養士や科学者の研究によって、これらの多くが事実ではないことが明らかになってきています。
栄養士、分子生物学・機能生物学博士、そしてスペイン栄養学アカデミーの一員であるラモン・デ・カンガス氏は、スペインの新聞紙「El País」にヒマラヤ岩塩が普通の食塩と同量のナトリウムを含んでいると説明しています。
一方で、専門家は世界保健機関が定める塩分摂取量はヒマラヤ岩塩にも当てはまるとしています。つまり、通常の食塩同様、摂取量は一日5グラム、つまり小さじ一杯程度に抑えるべきなのです。
学術雑誌「Journal of the American College of Cardiology」に掲載された研究にあるように、ヒマラヤ岩塩の過剰摂取は、その他のいかなるナトリウム源と同じく、高血圧に留まらない様々な健康被害を引き起こす可能性があります。
マーケティング法に対する疑問
ヒマラヤ産ローズソルトの人気度や謳われている効能とは裏腹に、通常の食卓塩と比べて健康に良いと言う科学的証拠は存在しません。「純度が高い」という理論にも証拠はなく、その人気の大部分は科学ではなくマーケティングに起因しています。
また、このような食品を選ぶことで、健康効果よりも経済的負担が大きくなってしまいます。通常の食塩よりはるかに高い上に、食塩と同様の注意を払いながら使うべきものなのです。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
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