住宅問題は健康にどんな影響を与えるの?
住宅問題は健康に大きな影響を与えて いるにも拘らず、往々にして見過ごされています。住宅環境は、生活の質を向上させる要因であったり、住む人の病気の原因となったりします。
世界では約20億人が自宅にトイレを持っていないと推定されています。発展途上国では、3世帯中2世帯がより質の高い家を必要としており、毎年約1400万人がホームレスとなっています。
このような数字を見ても、住宅問題の解決は非常に重要です。これは政府も取り組まなければならないレベルの課題です。
住宅問題と健康への影響
健康に大きな影響を与える住宅問題はいくつかあります。そのうちのいくつかを紹介します。
1.基礎の問題
世界にはコンクリート製の基礎を持たない家が 多く、土でできた床の家も相当数あります。
このような家では、寄生虫や害虫が棲みつきやすくなります。子供や免疫力の低下した人がいる場合には、これは非常に大きな問題です。
2. 壁
壁の構造が不十分であったり、不適切な素材でできている場合、害虫や寄生虫が住みつくという点で、基礎と似たような影響があります。 さらに、壁が崩壊するリスクが高くなり、そこに住む人々に対して十分な断熱効果も得られません。
3. 屋根の欠陥
最も一般的な住宅問題のひとつに、破損や不適切な屋根があります。 屋根の構造が不十分だと、湿気を促進してしまいます。 すると今度は、カビやその他の菌類の発生につながります。
4. 照明と換気
窓は、家の中に光と換気をもたらすため、非常に重要です。場所によっては蚊帳が必要でも、全員が蚊帳を持っているわけではありません。
また、近隣が安全でない場合、窓を密閉したり、窓のサイズを小さくしたりしがちであり、その結果、光と新鮮な空気を遮断してしまいます。
5. エネルギー
現在でも、調理に薪や石炭を使用している家庭は多くあります。これによって発生する煙は呼吸器系に有害です。
一方、特に先進国では、暖房や換気システムが必ずしも十分効率的ではない場合が多くあります。そのため、家の中の温度管理が不十分になることがあります。
6. スペース不足
過密化は、現代社会においてますます一般的な問題となっています。 過密化とは、住宅内の居住スペースと居住人数の関係を指します。
過密化には世界共通の基準はありませんが、3人以上の人間が同じ部屋で寝泊まりしなければならない場合に一般的に問題とされます。 また、一部の家庭では、住居スペースを動物と共有している場合もあります。
7. 水と衛生
これは健康維持に不可欠な要素です。多くの家庭に影響を及ぼし、病気のリスクを著しく高める住宅問題のひとつです。家庭内に飲料水と衛生設備があることは、病気の予防に不可欠です。
8. 環境
適切な住宅はアクセス可能でなければなりません。つまり、危険のない場所にあり、子供や高齢者、障害者の移動を容易にする機能を備えているということです。同様に、汚染がなく、大惨事や社会的不安の危険性がないものでなければなりません。
こちらもお読みください:【小さな部屋でもクリエイティブに】スペースを最大限に活用するアイデア
住宅に起因する健康問題
住宅の問題は、人の身体的および精神的な健康に直接的な影響を及ぼす可能性があります。その影響として考えられるものには、以下のようなものがあります。
1. 精神衛生への影響
過密状態は性的虐待や家庭内暴力を助長します。 また、ストレスやうつ病のレベルを高め、自尊心の低下にもつながります。 十分な居住スペースがない場合、個人の人格が自律的に成長する上でも問題が生じます。
一方、危険な地域や環境は、不安や不眠症になりやすい要因となります。また、犯罪や暴行の被害者になる可能性も高くなります。
ある科学的研究では、過密な場所に住む人々は、人口密度の低い場所に住む人々よりも精神状態が悪いことが示されました。
2. 呼吸器系の問題
住宅の構造や温度調節システムが適切でない場所では、呼吸器疾患の温床となる可能性が高くなります。
これは、米国疾病対策センター(CDC)によっても裏付けられています。一方、空気の質が悪いことや換気問題、これらに関連するあらゆる問題は、アレルギーを発症するリスクを高めます。
一方、過密状態では、換気が不十分で隔離もできない場合、呼吸器感染症が簡単に他の居住者に広がります。これは、結核などの場合、深刻な事態を引き起こす可能性があります。
こちらもお読みください:ビタミンB6の働きについて知ろう
3. 消化器疾患
住宅環境の 問題は、消化器疾患の原因にもなります。不適切な住宅は寄生虫の発生を助長します。
4. 心血管疾患と住宅資材
住宅の温度が適切に調整されていない場合、極端な暑さや寒さが発生し、特に高齢者の心血管疾患のリスクを高めます。
これに加えて、一部の家屋にはアスベストなどの発がん性物質や鉛などの有毒物質が使用されているという事実もあります。 これらの物質にさらされ続けることは明らかに危険性を高めます。
5. 転倒や怪我
不適切な地域に建てられた住宅、危険な環境、構造上の欠陥は、転倒や重大なけがの 可能性を高めます。これは、「世界保健機関(WHO)の住宅と健康に関するガイドライン」にも記載されています。
この種の負傷のリスクは、複数の要因により50歳以上の人々で高まります。まず、高齢者は生活時間の半分を屋内で過ごし、骨ももろくなっているため、わずかな転倒でも骨折やその他の負傷を引き起こす可能性があります。
住宅問題を解決する方法
もしその人が十分な資源を持っているのであれば、他の出費よりも先に、住宅問題の解決と健康的な住居の確保を考えるべきでしょう。 優先すべき事項は以下の通りです。
- 衛生状態の最適化:水やトイレ、浴室の適切な管理、および健康的な習慣の導入など。
- 空気の質を改善する:窓を十分に確保し、必要に応じて蚊帳で保護することが何よりも重要です。
- 湿度:湿度を低減するには、屋根の修理と、壁や床に適切な素材を使用することが不可欠です。アドベ、焼成レンガ、木材、竹などが適切な素材です。
- 空調:理想的な選択肢は、クリーンエネルギーを選ぶことです。太陽エネルギーやその他のエネルギーを利用できない場合は、天然ガスがよい選択肢です。
- アクセシビリティ:子供や高齢者の移動リスクを特定する必要があります。そして、事故が起こらないように家屋を選ぶましょう。
- 警報システム:事故を防ぐために、住宅には複数の安全装置を設置すべきです。理想的には、煙や一酸化炭素の警報器も設置すべきです。また、子供や高齢者の事故を防ぐには、階段のゲートや窓のガードも必要です。
健康的な住宅環境は社会的責任です
住宅問題の解決は、特にそのためのリソースがない場合、個人の手に余ることもあります。この場合、政府の責任が問われます。政府もこの問題に取り組む必要があるからです。
住宅問題が健康問題を引き起こせば、社会保障制度への負担増、欠勤の増加、生活の質の低下につながります。したがって、住宅問題の解決は社会全体に関わる問題なのです。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
- Mangrio E, Zdravkovic S. Crowded living and its association with mental ill-health among recently-arrived migrants in Sweden: a quantitative study. BMC Research Notes. 2018;11(1).
- National Center for Environmental Health. (2020, 11 agosto). Basic Facts about Mold and Dampness | CDC. CDC. Recuperado 24 de octubre de 2021, de https://www.cdc.gov/mold/faqs.htm.
- Novoa, A. M., Bosch, J., Díaz, F., Malmusi, D., Darnell, M., & Trilla, C. (2014). El impacto de la crisis en la relación entre vivienda y salud. Políticas de buenas prácticas para reducir las desigualdades en salud asociadas con las condiciones de vivienda. Gaceta Sanitaria, 28, 44-50.