画期的な療法によって、こん睡状態の男性が意識を回復

· 5月 12, 2018

患者の男性は、いまだ外界と相互作用できないものの、意識を取り戻すことが出来ました。彼は、意識を取戻し、外界の刺激に対して、視線で反応しています。

数年間に及ぶこん睡状態の後に意識を取り戻す症例があると、それは、必ずニュースとなります。

しかしながら、フランスの病院で、少し前に起きた症例は、科学的な見地からすれば特殊なケースです。同じ状況にある多くの患者にとって希望となったことは間違いありません。

これはフランスのリヨンにある、Pierre Wherteimer神経科病院で、起こったケースです。

幸運なこの物語の主人公は、現在50歳で、大きな自動車事故に遭った後に不自由な身体となり、35歳からこん睡状態でした。

この病院に隣接するリヨン大学は、この患者に対して迷走神経への単純な刺激に基づく興味深い研究を実践しました。ただし、それはゆっくりとしたプロセスで、現在もなお、関係者はさらなる達成と進展を待っているところです。患者のこん睡状態からの意識の回復は、ゆっくりとしたペースです。

とはいうものの、彼は、既にさまざまな刺激に対して反応し注意を払い、彼の興味を引く対象に対して顔を向けることが出来ています。

まだ、スタート地点、初期段階にいるわけですがそれでもなお、進歩の最初のステップであり、疑う余地なく、まもなく驚くニュースをもたらすことでしょう。

では、その療法がどういったものに基づいているのかみていきましょう。トップレベルの医師チームによって開発され、認知科学の研究者であるMarc Jeannerodによって、指揮されました。

 

15年後に意識を回復

脳

心理学者と精神科医が、私たちに常に語っていることがあるとするなら、「意識というものが実際のところなんであるかを説明するほど難しいことはこの世にない」ということです。

愛する人がこん睡状態にいる人たちは、生と死の狭間は、奇妙な状態だという事を本当に良く知っています。それは、彼らはたしかに生きているという兆候を保ち続けてはいるものの、遠く離れた世界に取り残されており、人間としての概念を失っている、ということです。

そして、意識を制約する、こうした神経の活動は、しばしば極めて脆弱だということを私たちは覚えておく必要があります。植物人間の状態にいる患者を、繊細でリアルで身近な世界に連れてくること、これは科学者たちにとっても極めて難しいことです。

 

意識の回復のカギ-迷走神経

この研究は、雑誌「カレントバイオロジー」の最近発行の号に掲載されたばかりですが、このニュースは、瞬く間に世界中に広まりました。

ただ、注意を喚起する科学者たちもいます。なぜなら結局のところ、現時点においては、この療法を受けたのが、たった一人の患者だからです。したがって、この療法の真の有効性を評価するには、さまざまな脳の損傷を受けた沢山の患者でまだ試みる必要があります。

この療法は、迷走神経周囲への働きかけに基づいています。具体的には、患者の迷走神経の周囲に、小さなペースメーカーを適用することが基本となっています。

迷走神経というものは、無数の神経、臓器、脳の構造と繋がっていることをご存知でしょうか。それは、あたかも無限の機能が繋がっているチャンネルのようなものです。この「能動的な」神経が、どのようなタイプの反応を示すかを指示している、あるいは条件づけているのです。

この症例で科学者が行なったことも、迷走神経と繋がった特定の部位―網様体―を刺激することでした。

網様体は、睡眠と起きている状態を調節する機能をつかさどる等をする興味深い組織です。

「もし、迷走神経を刺激したら、こん睡状態にある患者の意識を回復させることはできるだろうか?」これが、このチームがこの療法を開始した前提でした。

この結果は、ゆっくりとしたものではあるものの効果はありました。ペースメーカーを装着された最初の患者は、意識の無い世界に15年間住み続けた後に、意識を回復したのです。

 

さらなる研究が必要

科学界の反応は、先に述べたように一般的に警戒心を抱くものです。迷走神経を刺激するテクニック自体は、目新しいものではありません。事実、これは、深刻な鬱のケース同様に、てんかんの患者にも試されてきています。

このテクニックの目指すところは、意識および沢山の臓器の活動を再び活発化させることです。しかしながら、この再活発化はきわめてゆっくりとしたプロセスです。また、患者はこん睡状態から意識を回復してはいますが、まだ、自主的な行動をとるのでも、外的環境と相互作用する能力があるわけでもありません。

患者は意識を取り戻した、それは確かです。彼の意識は目覚めています。そこには疑問の余地はありません。しかしながら、彼はまだコミュニケーションをとることも出来なければ、彼が自分の置かれた状況を理解しているという証拠もありません。

現在までの時点で彼が示している唯一の行動は、見つめるという行動に限られています。なにかが彼の注意を引くと、彼は、それを見つめ観察します。また、特に彼の家族が何かを読んでいることに、特別関心を寄せているようです。

目

既述の通り、意識というものが何であるかを正確に説明するのは、非常に困難です。意識には様々なステージがあり異なるレベルがあります。このため、この患者は、まだ最初のステージにいると言う事が出来ます。

彼にはまだ、完全に意識を取り戻し、コミュニケーションをとれるようになり、彼の環境と本当に繋がれるようになるまでに、失われているいくつかのステージがある、ということなのです。

時間の経過と共に、適切な刺激によって、彼がそのレベルに至れるようになることが望まれています。

それまでは、こん睡状態にある患者に対する迷走神経の療法に関するさらなるニュースを待つことにしましょう。