新しい膝の治療法 「生体包帯」 の研究

7月 10, 2017
現在、膝の軟骨の怪我に対して、幹細胞を使った包帯を作るという新しい治療法の研究が進められています。この記事では、この画期的な方法により将来の膝の手術がどのように変わっていくのかご紹介します。

半月板損傷はとても一般的な膝の怪我の一つです。実際にヨーロッパとアメリカだけでも、毎年100万人以上の患者がいると言われています。

半月板損傷は、膝の皿を安定させクッションとしても機能する軟骨が損傷した状態です。

この怪我は運動選手、特にサッカー選手に多く見られます。ほとんどの場合、複雑な手術をして膝を固定させる治療を行います。

膝周辺は血管が通っていないので、それほど簡単に怪我が治りません。結果的に完治しない人も多く見られます。

医師によく薦められるのは、膝関節半月板切除と呼ばれる手術です。これは損傷した半月板を完全に取り去ってしまう治療です。通常は成功しますが、将来他の部分に支障が出る可能性もあります。

しかし近年、イギリスのリバプール大学とブリストル大学により、大変大きな研究成果が発表されました。損傷した軟骨を取り除かずに怪我を治療できる画期的な方法です。

これは患者から採取した幹細胞で作る「生体包帯」というものです。生体包帯が、幹部の細胞の成長を刺激し、損傷した組織の修復を促進します。

幹細胞で作った生体包帯

 

専門誌 Stem Cells Translational Medicine で、関連する研究が発表されました。論文の中では、「生体包帯」がどのように半月板損傷の回復を促すかが説明されています。

生体包帯はAzellonという企業により開発され、Innovate UK が更にその研究に対して資金提供を行っています。

世界で初めて、5名の患者に生体包帯が使用されました。全員18歳から45歳で、血行がない半月板の内側のホワイトゾーンという部分を損傷しています。

  • まず患者の骨髄から幹細胞を採取します
  • 研究所で2週間、採取した幹細胞を培養します
  • 培養した細胞を細胞膜構造の中に入れます
  • 損傷している半月板に移植します
  • 軟骨と一緒に縫い付け、膝に固定させます

その結果は?

驚くべきことにその研究は成功を収め、今後の治療の躍進の第一歩となりました。

治療の12ヶ月後、全ての患者が通常の半月板を取り戻しました。更に、患者のうち3名は24か月後に完治しています。

残念なことに、その他の2名は怪我が再発してしまい、損傷した半月板を除去する手術が必要でした。

2つの手術

この新しい治療により、もう手術が要らなくなると思うかもしれません。しかし、この治療を確立するには2つの手術が必要です。

  1. 骨髄から幹細胞を採取する手術
  2. 採取した細胞から作られた生体包帯を移植する手術

しかし現在、研究者のAnthony Hollanderを中心に、更によい治療の開発が進んでいます。コストを軽減するために、ドナーの幹細胞を活用する方法です。さらにこの方法により、上記の2つの手術が不要になります。

ブリストル大学の外科手術分野の第一人者、Ashley Blom教授も次のように述べています:

生体細胞は、特に若い患者やアスリートに非常に有効な治療法となるはずです。早期発症骨関節炎のような半月板損傷の後の症状を回避することが可能となるでしょう。”

結果

この治療法はさらなる研究が必要です。しかし、「生体包帯」の研究結果は非常に面白いものでした。半月板損傷に対する、将来の重要な治療法となるでしょう。

生体包帯によって損傷した組織が修復されるので、膝の機能を正常に戻すための更なる手術が不要になります。

さらに、その組織が一層修復を進めることで、関節炎、関節症、変形性関節症などの慢性疾患のリスクを大幅に軽減することが可能になります。

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